未来にはばたく君たちへ

3月に入りました。小学6年生、中学3年生は卒業を迎えます。桜
新しい季節を迎える中、新型コロナウイルス感染症が終息せず、先が見通しにくい事態になっています。
1月に見たテレビで、ある大学生が「大学に入ったものの、まだクラスメイトに1回も会っていない、すべてオンラインでの授業でした。」と言っていました。卒業してゆく君たちにも、きっと、これからの生活はどうなっていくのだろうといった漠然(ばくぜん)とした不安があるかと思います。
そこで、今月は少し希望の持てる話をしましょう。 

教室は間違えるところだ

わたしは37年間を中学校の教師として、ほぼ中学生と一緒に過ごしてきました。
口癖は「教室は間違えるところだ。」でした。日頃から授業を受け持つクラスではこんなことを言っていました。

最初から分かっている人はいない、みんな間違いながら学んでいく。
大人になって間違うのは恥ずかしいけれども、まだ勉強中のみんなが教室で間違えたっては少しも恥ずかしいことではない。
間違えた本人は、次には同じ間違いをしないだろう。
周りの人は君が間違えたおかげで、より丁寧な説明をしてもらえる。
そうか、こんな間違いをするのか、じゃあもっと説明を丁寧にやろう、と先生のためにもなる。
良いことだらけだ。だから、どんどん間違えてくれ。

間違った時は少し恥ずかしいけれど、クラスの人には間違いを笑うな、と言ってあるから、君の間違いを笑う人なんかいない。
安心して間違い、その上に知識を積み上げていこう。

1年生の一番最初の授業で「教室は間違えるところだ」ということと、ほどよく緊張しながら授業を受けてほしいということを伝えました。
間違いにも単純な勘違いから、正解に鋭く迫る間違いがあります。
正解に迫る間違いから今度は他の誰かが考え方を工夫したり、見方を変えたりしながら考ることで
「ああ、そうか。」といった声が飛ぶことがあります。
みんなで正解に迫る考えを出し合いながら、ヒントを積み重ね、答えを考え出していきました。
熱気あふれる授業でしたが、そんな授業ができたのは「間違いは正解への貴重なヒント」だという全員の理解と
「間違っても誰も笑わない」と言う約束が授業の根底にあったからです。

大人だって間違える

だいたい、大人は何でも知ったようなことを言うけれど、社会人1年目からなんでも間違わずにできる人はそう多くない。
多くの人は右も左もわからない状態からのスタートなのだ。間違えるなと言うこと自体に無理がある。
会社員だって、公務員だって、教員だって、最初はみんな間違いながら学んでいく。

わたしも教員になりたての頃は随分とみんなに迷惑をかけました。それでも、試行錯誤しながら、少しずつ教員としてのスキルを磨いていきました。今でも思い出す失敗は会計です。1年目に会計を担当したのですが、どうしても収入と支出の合計が合わないのです。
その時は、ベテランの先生が見かねて助けてくださいました。
でも、その経験がもとになって、会計には少し詳しくなりました。
「ここが違ってますよ。」と、アドバイスまでできるようになったのです。
でも、私はこの新人の頃の失敗のおかげで、会計の極意を学びました。
まさに失敗は成功の基!

失敗は成功の基

以前テレビで飲料や食品の新商品の開発の舞台裏を見たことがあります。
ある会社の商品開発部の人たちが新しい商品を開発し、最後に社長に試食してもらい、商品として売り出すかどうか決めると言うものでした。
例えば、A社のサイダーですが、一つの商品を売り出すときに作る試作品は20~40種類にも上るそうです。
出来上がった試作品を開発部の人たちで試飲を繰り返し、「もっと甘く」「もっと酸っぱくしたほうがよい」等の研究が続きます。
半年から8か月かけて試作品作りが続くそうです。
企画から含めると約1年間の年月がかかることになります。

そして出来上がったものを社長に試飲してもらいます。
OKが出なければ、またやり直しとなります。
でも、この失敗が成功へと導くカギであることは事実です。膨大なデータが蓄積されて、次回にいかされることは間違いありません。
さらに、この試行錯誤の中で他の会社ではまねのできない技術やレシピができあがります。
まさに、失敗の積み重ねが会社を支えると言っても過言ではありません。

また、失敗の中から出来上がった製品もあります。
いくつか例にあげると瞬間接着剤、付箋(ふせん)、柿の種、コカコーラ、電子レンジなどあります。
付箋は、しっかりとくっつかないところが失敗であり、成功でもあります。
付箋はアメリカの3Mという会社が作った傑作ですが、もともとは強力な接着剤を開発していました。
しかし、出来た商品はいとも簡単にはがれてしまう失敗作だったのです。
ところが、それは簡単にはがせるという利点でもあったのでした。
また、みなさんは「柿の種」を食べたことがありますか。
最近「ピーナッツと柿の種の黄金比は3:7」などと話題になったあれです。
このあられは偶然の失敗から生まれました。
あられの生地を打ち抜く金型(かながた)を創業者の今井さんが踏んでしまったのです。
今まではまっすぐしていた金型が三日月形に変形してしまいました。
高い金型は簡単に修理ができなかったので、そのまま使って作ったあられを焼き上げました。
この奇妙な形のあられが後の「柿の種」です。思わぬ失敗が会社の主力商品にまでなりました。

おわりに

このように、失敗は成功を導き出す一つの過程ということができます。
失敗の原因を探り、改良を加えていくことが成功へとつながります。
この時に必要なものは「失敗に負けるものかという覇気(はき)」と「根気」です。
また、失敗をみんなで支え合う雰囲気も重要です。

チアガール失敗を恐れていては何も始まりません。
みなさんもこれから新しい学校や社会へと飛び出しますが、是非失敗をおそれずに何事にもチャレンジしてほしいと思います。
本田総一郎氏(ホンダ自動車創業者)がよく言っていた「やってみなはれ!」の精神です。
失敗を恐れず、まずやってみないことには何も生まれない。失敗しても「よし、次を見ていろ。」という気概が大切なんです。
その失敗を糧(かて)にして次へと挑(いど)んでいく気力こそが成功への道につながります。
みなさんがこれから先、もし失敗したとしても、そこから未来が開けて行くことをお忘れなく。
なにせ失敗は新人の特権なのだから!