風薫る5月到来!

みなさん、こんにちは。
大型連休も終わり、中には憂うつな人もいるのではないかと心配しています。わたしも当分祝日がないので憂うつです。
昔から入学して1か月たったころに「行きたくないなあ」と気分がのらなくなるのが「5月病」と言われるものです。
しかし、学校も会社も始まったばかり!本当の面白さに巡り合えるのはこれからですので、少々気分がのらなくても、ここは踏ん張りどころです。

さて、今月は読書の話です。
なぜ、今、読書かと言うと、実は少年センターのAさんが机の上に「中原中也詩集」を出していたからです。
「へー、今の人も中原中也か、やっぱり文学は時代を超えて普遍なんだな」と感心していると、
よく聞いたら中也は漫画のキャラクター(文豪ストレイドッグス)だそうです。
でも、文学作品への入り口は漫画でもよいのです。
中原中也ワールドを満喫してもらえば、きっかけが漫画だったとしても何の問題もありません。中原中也
新緑の木々の中、優しい春風に吹かれながらの読書もよいものです。
そこで、今回は、みなさんにもほんの少しですが中原中也を紹介いたします。

空が大好きだった夭逝の天才詩人

中原中也は明治40年という明治の終わりごろ、山口県山口市に生まれました。
中原家は代々医者をしていて土地の名家でした。
そこの長男として、期待の星として誕生しました。お父さんはあまりの嬉しさにお祝いの宴会を3日3晩開いたそうです。
勉強が良くできる子どもでしたが、医者にはならず、詩人としての道を歩みました。そして、わずかに30歳で亡くなってしまいます。
中原中也は2冊の詩集を出版しています。
その中から「山羊の歌」に所収された「汚れつちまつた悲しみに・・・」を紹介いたします。   

汚れちまつた悲しみに           

汚れつちまつた悲しみに

今日も小雪の降りかかる

汚れつちまつた悲しみに詩の説明

今日も風さえ吹きすさぶ

汚れつちまつた悲しみは

たとへば狐の皮ごろも

汚れつちまつた悲しみは

小雪のかかつてちぢこまる

汚れつちまつた悲しみは

なにのぞむなくねがふなく

汚れつちまつた悲しみは詩の説明

倦怠(けだい)のうちに死を夢む

汚れつちまつた悲しみに

いたいたしくも怖気(おじけ)づき

汚れつちまつた悲しみに

なすところもなく日は暮れる

「汚れつちまつた」は「汚れっちまった」と読みます。
普通は「汚れちまった」ですが、「汚れっちまった」は山口の方言のようです。
「悲しみ」が何を指しているのかは不明ですが、好きな女性のことだったのかもしれません。
中也にとっては汚したくない、純粋な思い出だったのでしょう。しかし、「汚れちまった」のです。
この後24歳で、弟を病気で亡くし、さらに長男をも29歳の時に無くしてしまいます。この時の中也の悲しみは大変深く、葬儀の時子供の遺体を抱いて放さなかったといいます。不幸の多かった人生でした。18歳で上京し、詩を書きながら30年の生涯を送りました。中也の詩は比喩が多く使われ、切れ味鋭い詩になっています。また、中也の詩には「空」という言葉がたくさん使われています。思うに任(まか)せぬ人生で何度も空を見上げて、物思いにふけっていたのかもしれません。晩年を過ごした鎌倉の空は故郷・山口の空とつながっています。希望に満ちた青春時代を過ごした山口の空に。

おわりに

今回のお話は、本に出会うきっかけは「漫画であってもかまわない」という話でした。
その漫画を読むことで文学作品に興味をもって、そこから「本物」の方に進んでくれればいいのです。
中学・高校時代に少しかじった程度でも、「知っている」ということが大事なのです。
大人になってからまた読み返すことができます。
中也は今でも特に若い女性に大人気です。
国語の教科書で写真を見た方も多いと思いますが、美男子で夭逝(ようせい)の天才詩人です。人気なのもわかる気がします。

今回は、漫画を入り口に中原中也の詩を皆さんに紹介しました。
詩に触れる機会は、なかなかないかもしれませんが
このコラムが一つのきっかけであればうれしいです。

 

(参考文献)

・中原中也 (佐々木幹郎著、岩波新書)

・中原中也 (詩集、加藤周一編、潮出版社)