3月に入りました。さくら
花満開の季節まであと少しと迫り、期待感が膨らみます。
さくらの開花を待つわくわくする気持ちは平安時代の昔も今も同じです。

言葉は人の心に長く残る

言葉はよい意味でも、悪い意味でも長く心に残ります。
その証拠に「金言」だとか「名言」だとか過去の遺産がたくさんあります。
例えば、札幌農学校のクラーク博士の「 Boys, be ambitious!」という名言があります。
時は明治10年4月のことで、札幌農学校を去ることになったクラーク博士が在学生に向かって言った言葉だそうです。
「少年よ、大志を抱け。」と訳されるこの言葉は今でも多くの人に支持されています。
志を大きくもって事に当たれ!という励ましの言葉です。
これからを生きようとする札幌農学校の若者に、生きる方向を示唆するこの言葉は深く心に残ったことでしょう。

また、黒柳徹子著の窓際のトットちゃんにでてくる「トットちゃん」は
小学校の校長先生に言われた「君は本当はよい子なんだよ。」という言葉を
折に触れて思い出しながらここまで生きてきた、と述懐なさっています。
心を込めて伝えた言葉はまるで風のようにその人の心にすっと入り込み、長く魔法の言葉となってその人を一生励まし続けます。

このように心を打つ言葉は長く人の心に残ります。
しかし、クラーク博士のような希望を抱かせる言葉はいいのですが、逆に人を傷つける言葉として長く心に残る場合もあります。
特に負のイメージを抱かせる身体的な特徴や性格等に係わる言葉には十分気を付けなくてはなりません。

言葉には話し相手の心が宿る

みなさんはNHKの「朝ドラ」をご覧でしょうか。
ラジオ英会話と親子三世代のお話です。
雉島(きじま)家に嫁いできた安子と稔(みのる)との間に、長女「ルイ」が生まれます。
稔が戦死し、安子は新たに出会ったアメリカ人と一緒に、ルイを連れて雉島の家を出ようとしますが、
義父に止められ、ルイを連れていくのをあきらめます。
母親が自分を見捨ててアメリカ人とアメリカにわたってしまうと思ったルイは
「I hate you!」(わたしはあなたがきらいだ!)と母に言ってしまいます。
このことは、もちろん一生安子の心に強烈な出来事として残ることでしょう。
さて、ここで考えなくてはならないのは、言ったほうのルイの心の中です。
ルイが自分を置いて男性と一緒にアメリカに行く母親に「嫌いだ」という心情は誰もが理解できますが、
ルイはきっと後で冷静になったときなぜ母親は自分を置いていかなければならなかったのか、思い当たる時が来るでしょう。
当時のことをよく知る人から状況の説明を受ければなおのこと「I hate you!」は言い過ぎた、と考えるでしょう。
自分の娘がかわいくない親はいませんから、母親が「断腸の思い」で決断しなければならなかったことは容易に想像できます。
となれば、自分が言ったその言葉はルイをも後悔の念で縛り付けます。
いったん、口に出してしまった言葉は言った相手を苦しめ、そして言った本人をも苦しめ続けます。
これが呪縛ですね。言い換えれば「言霊(ことだま)」なのです。
昔の人は「言葉は口に出したその瞬間から魂を持つ」と信じてきました。
だから、「めったなことは言ってはいけない。」とたしなめられてきたのです。
言えば言葉に魂が宿り、何らかの力を持ち始めると考えたからです。

言葉は両刃の剣です。
しかし、普段から心のこもった言葉を使っていればたとえ、きつい言い方をしたとしても心が通じることもあります。
「あれは俺への励ましの言葉か」と良い方に受け取ってくれるからです。
要は、普段から心をこめて温かい言葉を使っているかどうかが最も大切です。
なにせ言葉にはその人の「心が宿っている」のですから。

(参考)言霊(ことだま)古代、ことばにやどると信じられた霊力。発せられた言葉の内容どおりの状態を実現する力があると信じられていた。(日本国語大辞典より)